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● 酒造りの常識を疑う:蔵元杜氏の挑戦

富美菊酒造は富山市内に居を構える小規模な酒蔵で、1916年(大正5年)創業という長い歴史と伝統を持ち、2016年には創業100周年を迎えました。

現在の蔵元・羽根敬喜(はね けいき)は、東京の大手発酵メーカーに勤めたのち、実家の富美菊酒造を継ぐため富山に戻り、酒造りの世界に入りました。

当時の酒造りは、鑑評会での受賞歴も多いベテラン杜氏が行っていましたが、品評会用の酒と市販される酒には造り方に大きな違いがあるのが一般的でした。それに疑問を持った羽根は、市販酒こそを美味しいものにと、あるとき「全ての酒を、大吟醸と同じ造りでつくる」ことを思い至ります。

今までの酒造りの常識に反する発想は、杜氏の大反対に合いますが、それを自ら蔵に入って酒造りを行うことで説得。酒米の原料処理の要である吸水処理を、大吟醸と同じ手間のかかる限定吸水という手法で行うことから、新しい時代の富美菊酒造の酒造りが始まりました。

羽根は、ベテランの杜氏から見様見真似で酒造りの工程を学び、やがてその全行程を引き継ぐようになりました。現在は自らが蔵元杜氏として、地元の蔵人とともに、羽根屋の酒造りを指揮しています。

●限定製造の特別酒「羽根屋」の誕生

富美菊酒造では現在、「富美菊」と「羽根屋」の2つのブランドを展開していますが、この全国市場向けの限定製造の特別酒「羽根屋」を軸に、あたらしい時代の日本酒造りへの挑戦を行っています。

羽根屋の日本酒は、日本の名水百選にも選ばれている富山の名水・常願寺川水系の天然水を用いて造られます。そして、少量単位で手間のかかる限定吸水による原料処理に加え、箱麹・蓋麹による丁寧な麹処理も、最高級の吟醸酒のみで用いられる手法を全ての酒で実施しています。

日本酒のしぼりの工程でも、タンクでできるお酒の中間部分に当たる、「中汲み(中取り)」という最良の部分のみを羽根屋で用いているのです。

羽根屋は非常に手間のかかる酒造りを行っているため、製造量を拡大することができず、少数限定品となっていますが、造り手が最高品質のお酒を生み出すために情熱を込めて、丁寧で、真摯な取り組みを日々進化させ続けています。

●新しい価値の提案で、世界の日本酒へ

羽根屋という名称は古くからの屋号で、このブランドには「翼が飛翔するが如く、呑む人の心が浮き立つような日本酒として存在したい」という願いが込められています。

年間を通じて酒造りを行う四季醸造を始めた「羽根屋」は、純米吟醸生原酒の煌火(きらび)、純米大吟醸の翼(つばさ)といった新しい定番商品を始め、特別限定酒などの新しい提案を次々と行ってきています。

そして、世界最大規模のワイン・酒のコンペティションである「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」のSAKE部門で、2年連続ゴールドメダルを受賞し、「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」でも連続受賞するなど、新しい日本酒の価値の提案が評価されるようになってきました。

また、近年は富山産の酒米・富の香(とみのかおり)を使った酒造りにも再び取り組み、「羽根屋 純米吟醸 富の香」がフランスの日本酒品評会「Kura Master 2018」で最高賞のプラチナ賞を受賞するなど、世界でも注目を集めています。

日本酒の限りない可能性を模索し、挑戦し続ける…  羽根屋は、至高の酒質を目指す絶え間ない革新を、今後も続けていきたいと思います。